沿革

凡夫のためのお経

 姿や形のない仏のはたらきを、凡夫の心に少しでもわかるように、文字と言う形で表されたものがお経です。

 お釈迦さま一代のご説法の特長は、相手に応じてお経が説かれたことです。キリスト教でもイスラム教でも相手に応じた教えではないようです。また孔子の聖語も相手に応じて説かれたものではないのです。ですから仏説を応病与薬の法であると言われるのです。そのためにお経の数もそれを註釈したものまで加えると八千五百六十二巻におよんでいます。その内お釈迦さまが説かれたお経が約七千八百巻といわれています。

 お経は「仏さまの説かれた教え」であり、「仏のことを説いた教え」であり、「仏になる教え」が説かれているのです。

 世に正しい教えと申されているものは、お釈迦さまが説かれたこのお経を根本として、それを論じ、それを釈したものを人間の計らいや分別をまじえずに、疑いなく、素直にその心にふれ、生活実践の要とすることであります。どれほどすばらしいお経でも、私たちの凡夫に相応してくださらない、とてもかけ離れたお経では、ちょうど道があっても通れない道と同じことです。

 凡夫なるが故に凡夫にぴったりと仏さまの方が離れてくださらないお経が説かれていることが、相手に応じてお経をお説きくださったお心であります。

 凡夫の方から心を運び、努力精進してお経の心に近寄ろうとするお経が多いようです。

 今、凡夫のために説かれたお経として親鸞聖人は、仏説無量寿経、仏説観無量寿経、仏説阿弥陀経の三つのお経を選ばれたのです。

『聞法(昭和62年8月1日発行)』 (著者 : 武田 智徳)より