沿革

熊はんと御隠居が読む阿弥陀経:その7

御隠居 「処というのは、どこということで、『祇樹給孤独園』とあるやろ、ほれ平家物語の最初に出てくる祇園精舎がそれのことや。」

   「へえー、御隠居はん、よう知ったはりますな。もしかしたら、お釈迦さんが説いたはったとこに、いたはったんちゃいまっか。」

御隠居 「これ、そしたら私の歳はいくつになんねんな。人を化け物のようにいうたらいかんな。けどな、お経というのは、いつ聞いても、お釈迦さんが直接説いて下さってるように聞いていくんやで。そのことを表してるのが、一時ということやったやろ。」

   「はあーそうでしたな。ところで、祇樹給孤独園てどんなとこでっか。」

御隠居 「そやな、お釈迦さんがおられた当時のインドはいくつもの国にわかれて、その中のコーサラ国の首都の舎衛城に、ある長者がおってな、スダッタという名前なんやけど、そのお方は親のない子供や身寄りのない老人の世話をしておられたんや、それで、給孤独ともいわれたんや。」

   「給孤独て、孤独な人に給仕するということでっか。」

御隠居 「そや、よう知ってるな。」

   「いやー、そんなほめられたら照れるやおまへんか。」

御隠居 「ほほー、熊もやっぱり照れるか。さて、続きや。その方がある日、王舎城というところで、お釈迦さんの教えを聞いて、たちまち信者となって、自分の住んでる舎衛城にも来てもらいたいと思ったんやな。」

   「そんなら、そのスダッタはんは、酒と女でお釈迦さんをつったんでんな。」

御隠居 「これ、熊はん。あんたとちゃうで。お釈迦さんは、そんなんで動くような方やあらへん。」

   「そんなら、どうしはったんでっか。」

御隠居 「自分の住んでる舎衛城にお寺を建てることにしたんや。祇園精舎というてる精舎というのは、お寺ということや。それで、場所を探したら、コーサラ国の王子の祇陀太子の持ってる林がええということになって、スダッタはんは、そこを分けてもらお思て、頼みに行ったんや。けど最初は祇陀太子も譲りたないもんやから、断ったはったんやけど、あまりにしつこいから、いじわるいうたら諦めるやろと、『欲しいと思う土地に金貨を敷き詰めなさい。』なんてことをいうたんやな。」

   「へー、そらなんぼお金持ちいうたかて、そんなんやったら、諦めるやろうな。」

御隠居 「ところが、スダッタはんは欲しい土地全部に金貨を敷きつめたんや。それでびっくりした王子が、なんでそこまでしてこの土地を欲しいんやと聞かはったんや。そこで、スダッタはんが事情を話すと、祇陀太子は感激して、お釈迦さんのそんな尊い教えを聞けるんやったら、私も手伝わしてほしいとゆうて、そこに生えてた木を提供して、お寺を建てたんや、それで二人の名前を入れて、祇樹給孤独園となったんや。」

『聞法(1995(平成7)年9月1日発行)』(著者:義本弘導)より