沿革

熊はんと御隠居が読む阿弥陀経:その14

御隠居 「『又舎利弗 極楽国土 七重欄楯 七重羅網 七重行樹』というとこから、しばらくは、極楽の飾りたてられた様子が説かれているんや。」

   「七重が3回出てきまっけど、これは何です。」

御隠居 「欄楯というのは、垣根のことで、極楽の建物は色々な宝石で出来た垣根が張り巡らされているということやな。次の羅網というのは、宝石で出来た網のことで、極楽の空にはそういう網がかかっているそうな。そして、行樹というのは、街路樹のことで、これまた、色々な宝石で出来てるということなんや。」

   「はあー、さよか。で、七重とはどういうことなんでっか。」

御隠居 「何聞いとんのや。だからな、欄楯というのはな、」

   「あー、御隠居、さては七重の意味知らはりまへんねんな。」

御隠居 「そういう熊はんは、知ってるんかいな。」

   「これはでんな。もうちょっと、うしろのほうに出てくる『七菩堤分』に通ずる言葉なんでっせ。」

御隠居 「ほー、それで、その『七菩堤分』てなんちゅうこっちゃねん。」

   「『七菩堤分』ていうのはでんな、悟りを得るために役立つ7つの行法のことですわ。極楽というとこは、私らが思てるような楽が出来る世界なんではのうて、あらゆる人を悟りに向かわしめる世界なんでっせ。」

御隠居 「なるほどなあ、ということは、ひらとう言うと、私に仏法を楽しませようとされる阿弥陀さまの手だてということなんやろな。しかし、熊はんの今の話は、なんやぎこちないな。」

   「あれ、ばれましたか。実は、この前の法事の時にお坊さんが話してはったことを、どういうわけか、ここだけ、手帳に書いてましたんや。それ、こそって見てましてん。」

御隠居 「そやったんか。けど、何でここだけ書いてたんや。」

   「なんででっしゃろなあ。自分でもはっきりわからんのやけど。けど、極楽がほんまにそうなってんねんやったら、うっとおしいでっせ。そうでっしゃろ、垣根は七重になってるわ、空見たら、網が七重にかかったるわ、街路樹は七重に生えたるわで、ごちゃごちゃしてまっせ。せやから、これにもちゃんと意味あるんやろなと思ってたんでっしゃろな。そしたら。七重は七菩堤分に通じるといわはったから書き留めたんやと思いますわ。」

御隠居 「なんや、最初は、くそ坊主がぐたぐたぬかした、なんてゆうてたけど、ちゃんと聞いてたんやないか。」

   「へへ、ちょっとだけでっけどな。」

『聞法(1995(平成7)年9月1日発行)』(著者:義本弘導)より