沿革

熊はんと御隠居が読む阿弥陀経:その19

御隠居 「熊はんは、私らの御本尊の名前、知ってるか。」

   「御隠居はん、ばかにしたらあきまへんで、それぐらい、わてかて知ってまんがな。阿弥陀如来というんでっしゃろ。」

御隠居 「そら、悪かったな。そしたら、なんで阿弥陀如来というか知ってるか。」

   「それはでんな、えーっと、だからでんな。む、むかしから阿弥陀と決まってまんねん。」

御隠居 「ははー、そう答えるということは、知らんのやな。」

   「そういわはりまっけど、御隠居はんは、知ってるんでっか。」

御隠居 「そら、『阿弥陀経』にちゃんと説かれたるんや。それも今熊はんに尋ねたように、お釈迦さんが舎利弗に尋ねたはるんや。」

   「そんで、舎利弗はんは、答えたはるんでっか。」

御隠居 「いや、やっぱり答えたはれへんのや。」

   「なんや、それやったら、舎利弗はんも、わてと変わりまへんな。」

御隠居 「答えたはれへんとこだけは、おまはんと変わりないけど、なんで答えはれへんかったんかということがちゃうんやな。」

   「どうちゃいまんねん。」

御隠居 「ここのとこに『舎利弗 於汝意云何』とあるやろ。これは、舎利弗よ、そなたはどう思うかとお釈迦さんが尋ねはったんや。」

   「ああ、前に御隠居はんがいうたはった舎利弗に対する問いの1つでんな。」

御隠居 「そや、それでな、舎利弗は答えずに黙っておられたんやが、」

   「それやったら、わてとおんなんじでんがな。」

御隠居 「これ、黙って聞きなはれ。な、人が大事なことをしゃべってるのに口を挟むとしゃべりにくなるやろ。」

   「へえ、すんまへん。あっ、わかった。『阿弥陀経』に出てくる舎利弗への問いというのは、実はお釈迦さんが特に言いたかったこととちゃいまっか。」

御隠居 「そや、ようわかったな。」

   「へえ、今御隠居はんがおこらはったんで、わかったんですわ。」

御隠居 「そういうことなんや。『於汝意云何』という言葉に、これだけは是非説いておきたいから、よう聞いといてほしいとゆう、お釈迦さんの強い願が込められているんや。せやから、舎利弗はんは、仰せのままに聞こうと黙っておられたんや。」

   「なるほどなあ。」

御隠居 「せやから、これからは、わしの言うこと黙って聞かんとあかんで。」

   「何言うてまんねんな。御隠居はんとお釈迦さんでは出来が違いますがな。」

御隠居 「これ、口の減んやちっなあ。」

『聞法(1995(平成7)年9月1日発行)』(著者:義本弘導)より