沿革

共生

 南太平洋のソロモン諸島では、木を伐るのに不思議な風習があるそうです。木があまりにも大きくて歯がたたないと、原住民たちは怒鳴りつけてその木を倒すのだそうです。特別な能力をもった樵たちが夜明けにそっと木に忍び寄り、いきなり声の限りにわめきたて、これを三十日にわたって毎朝欠かさず続けると、木は次第に衰えて、ついに倒れてしまうそうです。怒鳴り声が木のいのちを殺すのです。原住民の話では、これで倒れない木はないそうです。

 この話を聞いてすぐに頭に浮かんだことは、桜守の人がいつも桜の木に声をかけてやるという話です。「今年も立派に咲いてくれてありがとう。来年もよろしく頼むね」と、やさしく声をかけてやると桜の木が喜ぶとおっしゃっていました。また花でも果物でも野菜でも、いい音楽を聞かせたり、やさしく声をかけてやるとよく成長するという話もよく聞きます。

 みないのちをもっているのです。

 「すべてのいのちはそれを愛そう愛そうとしている者のものであって、それを傷つけよう傷つけようとしている者の、おのではない」という言葉があります。

 木も花も草もあらゆる生き物すべて、愛そうとしているものの働きによって、いのちを輝かして生きているのです。傷ついたいのちも、その働きによって癒されるのです。逆に傷つけようとする働きによって、いのちを殺してしまうのです。私たちの怒鳴り声や差別する声、相手を傷つける言葉や行為によっていのちを殺しているのです。

 21世紀に向けて、あらゆるいのちとの共生ということが叫ばれています。現代人は豊かさ、便利さ、快適さを求めて、それを引き換えに海を汚し川を汚し、自然を破壊し多くのいのちを殺してきました。それ故、世界中の人々がすべてのいのちをどこまでも愛そう愛そうと喚びかけてくださっているいのちの喚び声に遇い、お念仏申しながら共に生きていかねばならないのです。

『聞法(1997(平成9)年7月20日発行)』 (著者 :不死川 浄)より