沿革

本願力にあいぬれば②

 私のお墓の前で 泣かないでください そこに私はいません 眠ってなんかいません
 千の風に千の風になって あの大きな空を吹きわたっています
 秋には光になって 畑にふりそそぐ 冬はダイヤのように きらめく雪になる
 朝は鳥になって あなたを目覚めさせる 夜は星になって あなたを見守る
 私のお墓の前で 泣かないでください そこに私はいません 死んでなんかいません
 千の風に千の風になって あの大きな空を吹きわたっています

 この歌をはじめて聴いたのは去年の九月ごろのことで、歌手は上條恒彦さんでした。他の事をしていて、耳からテレビの音が入ってきたものでした。そのときの感じは、「あっ、これは浄土真宗の歌かな。これは珍しい」と思いました。すぐネットで調べてみると、この歌の生まれはアメリカ。百年も前のことでこの歌詞は、追弔行事で何回も読まれた経歴があるそうです。もちろん英語の詩で、作者は分かりません。日本での訳詩は新井満さんで、歌手も新井さんを始め何人かの名前が挙がっています。わたしは十二月四日の本願寺津村別院の土曜講座で歌い「これは浄土真宗の『還相回向』を歌ったかのような歌ですね」ということからお話しをはじめました。

 信心の人は現生で、つまり生きているうちに正定聚といって浄土へ往生する仲間入りをさせていただきます。この世の命が終わると即時に浄土に生まれ、直ちに成仏の可をいただくのが真宗のご利益なのです。それだけではなく、すぐさま迷いのこの世に還って有縁の人々と関わりを持たせていただく。その中には、お釈迦さまや親鸞さまのようなとてつもない働きの方もありますが、この歌のように風や星になって、残してきた人々に希望を与える働きをするというのでしょう。

 このくだりは『正信偈』では「広由本願力回向 為度群生彰一心 帰入功徳大宝海 必獲入大会衆数 得至蓮華蔵世界 即証真如法性身 遊煩悩林現神通 入生死園示応化」とお示しです。新井満さんはご法義のあつい新潟県の生まれで、若くしてこの世を去った友人の奥さんの追悼のために訳詩をされ、作曲をされ、それをCDにされました。それをその友人の奥さんの一周忌に送られたということです。新井さん自身はひょっとして気付いておられないかもしれませんが、ご法義が身に染み付いていたのかもしれません。風景、風土、風雅、風姿、風流など、風の字が前につく熟語は百を超えるほどあるのです。組織の風通しが悪い、など風を使います。現代の住宅では、自然の風が通らない、などと言いますね。いろいろと考えさせられる「千の風」でした。

『北御堂テレホン法話 2007年3月より』